過去事例Ⅰ
観光地にある築25年の鉄筋コンクリート造7階建てリゾートマンションでした。
強風を伴う雨天時に5階の一室のリビング天井から数時間後に漏れ出し、雨が降りやんでも、1~2日間はポタポタと続くという不思議な現象です。
まずは、営業マンが現地に赴き現状確認と周辺の状況写真を撮影し、図面資料等を持ち帰ってきます。
調査スタッフは、それを基に複数の疑わしき経路を推測し、必要機材や調査日数を割り出します。
また、直上階の所有者の協力を取り付けるなどの事前調整も大事です。
さて、私たちが調査に向かったときは晴天でしたが、現地に着いてみると、そこはもう修羅場でした。
前日の雨の影響もあってか、まだポタポタと現在進行形でバケツに漏れている状況でした。
リビングの天井ボードは解体した状態でしたが、骨組の軽量鉄骨には錆が発生しており、長期に渡って漏水していたことがこれで分かります。
天井のコンクリート面をよく見ると長さが2mほどのひび割れがあり、そこから滲み出た水が点々と滴を作っては落ちてきています。・・・・・・ということは、直上階の床下に水が溜まっているなと直感できます。
では、そのひび割れ位置が直上階のどこに当たるかということが、重要なキーポイントになります。
ここで、用意してきた非破壊検査機器が役に立ちます。
この機器を利用して、天井のひび割れ位置が直上階のどこに当たるかを検査しました。
それは、直上階の脱衣所の床下に当たることが分かりました。
建築物では、床下に水廻りの配管を巡らすためにコンクリート面より15㎝くらいの嵩上げ床になっているのが一般的です。
では、なんとかその床下を覗いてみたいと思いますよね。
・・・・ありました。近くに洗面所があって、その下には点検口があります。
皆さんの家でも、洗面所の下にはこのような点検口があります。四角い合板をビスで止めてあります。
蓋を開けるとコンクリート面が見えました。なにやら湿った感じです、でも、そこからひび割れの位置とは1mほど離れているので目視では確認できません。
ここで内視鏡の出番です。
ひび割れの位置方向にカメラの先端を送っていくと、途中から水没してしまうのが分かりました。
何度か繰り返すうちに、床下の一部がそこだけ一段低くなっている構造であることが判明しました。
低くなっている箇所がどのくらいの広さなのかは分かりません、図面にも記載されていないのです。
しかし、境界部分が直角に落ちていることから意図的に造られたものであることは間違いありません。
ということで、このスペースに水がプールされるために、雨が止んでも1~2日間漏れ続けるという現象の説明がつきます。
今度は、どういうルートで雨水がここに入り込むかということになります。
漏水しているのは5階の天井、これまでに調査していたのは6階、上にはまだ7階の部屋があります。
6階の天井や、室内壁面には漏水の痕跡が全くありません。
つまり、6階の外壁にしか雨水の浸入口がないと判断できます。
そこで、洗面所側の外壁面を観察したところ、2種類の被疑箇所を見つけました。
一つは、エアコン室外機の冷媒管とドレンの引込み口、一つはパラペット下の防水層の境界部です。
ここにきて、やっと散水テストとなります。
私たちは、ただやみくもに散水しているのではありません。
ここでは経験の差が大きいと思います、理詰めで追いかけて、的を絞ってからの散水テストを行います。
散水方法も、豪雨を再現するか普通の雨を再現するかはヒアリングの時点で判断します。
今回は、現在進行形で漏れている中で行うので、前日の雨でプールされた水とは区別する必要があります。
そこで、ブラックライトに反応する蛍光液を1,000倍に希釈した水を散水しました。
エアコン室外機の冷媒管とドレンの引込み口に散水したところ、10分程で6階の洗面所下の点検口内に蛍光液が拡がるのを確認しました。
さらに、5階の天井コンクリートのひび割れよりこの蛍光液が漏れてくるのも確認しました。
これで、漏水ルートの点と点が一本の線でつながったのでした。
6階洗面所下の点検口に蛍光液を確認
5階天井に蛍光液を確認